マイル

 英国やアメリカ合衆国では、学術的にはキロメートルを使うことになっているが、日常生活には依然としてマイルが幅をきかせて、車の制限速度が60mph(約96km/h)であったり、旅客機の巡航速度が550mph(約880km/h)などと表示される。マイルの語源は、千を意味するラテン語のMILLEである。ローマ人の1複歩は5フィートで、その千倍の5,000フィートが1milleというわけである。

 このローマの距離単位は、その後いろいろな数字に変化した。いま使われている1マイルは、5,280フィートで、1.6kmに当たり、これは正式には法定マイルと呼ばれている。英国の1インチ地図は1マイルを1インチで表わすから、縮尺は1/63,360とややこしい。フランスが決めたメートル制の合理性をいち早く認めたドイツは、2cm地図、すなわち1kmが2cmの縮尺1/50,000地形図をつくり、これがわが国の地形図のお手本となった。

 マイルにはもうひとつ航海用のマイルがある。日本では海里と訳している。1海里は、地球の表面積に等しい面積をもつ球の大円弧1°の1/60、つまり1′の距離であると定義する。たとえばクラーク楕円体(1866)では1,853.248mになる。1929年の国際水路会議では、国際海里として1,852mを採用し、この値は日本でも計量法に規定されている。実質的には考える海域を代表する緯度における1′の距離として差し支えはなく、海図などに使われている。つまり海上では天体以外に目標物がないから、地球の中心角で距離を考えたほうがわかりやすいからであろう。

LinkIcon(社)日本測量協会発刊 月刊「測量」より抜粋