ユースタテイック海面変動

 第四紀の氷河時代には、昔4氷期が知られていたが、現在は6氷期とされている。すなわちアルプス地域でビーバー、ドナウ、ギュンツ、ミュンデル、リス、ヴュルムである。あとの4氷期は昔の名称と同じであるが、最後のビュルム氷期は、今から数万年前に始まり、約2万年前に中緯度地帯への氷床拡大が最大に達したが、氷床は約9,000年前に北欧から姿を消した。最盛期の氷床の厚さは2,000mともいわれ、それが減り始めてから消失するまでに、やはり数千年の歳月を費した。

 氷になる雪の補給源は海水蒸発による水蒸気であるから、氷床の発達に伴って海面は世界的に低下するが、間氷期には回復する。前者を海退、後者を海進と呼んでいる。このような海面の高さの変化がユースタテイック海面変動である。ユースタシーは英語でeustasyと書くが、研究社の新英和大辞典にもない。これはゴンドワナ大陸を命名したり、地殻のシアル・シマ分別説を唱えたオーストリアの地質学者ジュースによる1888年の造語である。

 氷期、間氷期の1サイクルにおけるユースタテイック海面変動の全量は、大約数十mであることが地形学的に明らかにされている。しかし、現在どのくらいのスピードで海面が変化しているかは定かではない。安定している大陸の験潮場の観測を使って、0.5mm/年程度の海面上昇をしているという説もある。氷期の繰り返しは、海岸段丘やカール地形の生成、あるいはアイソスタテイックな地殻変動にも関連がある。

LinkIcon(社)日本測量協会発刊 月刊「測量」より抜粋