二つの引力定数

 理科年表の天文部第1ページに、ガウス引力定数としてκ= 0.01720209895という数値がある。私たちにおなじみの万有引力定数は、同じページの少しあとに重力定数(重力は地球の引力と遠心力の合力のことだから、この用語はおかしい)として、G=6.672×10−11‰/kg・S2となっている。 κもGも惑星に関するケプラーの第3法則の比例定数である。

 この法則は「太陽からの惑星の平均距離の3乗と公転周期の2乗との比は惑星によらず一定である」というものである。平均距離とは軌道長半径のことで、これをa、公転周期をP、太陽と惑星の質量をそれぞれM,mとすれば、第3法則は次式で表される。       

a3/P2=κ2(M+m)/4π2=G(M+m)/4π2

 これだとκ2を平方に開けばGとなりそうだが、実は単位が違う。Gの場合はaがkm、Pがs、Mとmがkgの単位を使っているが、κのほうはaが天文単位、Pが平均太陽日、Mとmは太陽質量を単位に使う。軌道半径や太陽質量のその後の新しく得られた値を使えば、ガウスの数字とは違ってくるはずであるが、実は前述した式にガウス引力定数値を使って求めたaをもって「天文単位」を定義している。こういう約束ごとまで改変するのは大変なので、国際天文学連合は総会でガウスの数値は変えないことを決議している。なお、Gのほうはキャベンデッシュの鉛球実験で知られるような実験室の測定結果であり、数ある物理定数のなかでは有効数字がきわめて低い。

LinkIcon(社)日本測量協会発刊 月刊「測量」より抜粋