レーザー光

 レーザーはLight Amplification by Stimulated Emission of Radiationの頭文字をつづったlaserが原語で、直訳すると「誘導放出による光の増幅」である。

 原子や分子の量子力学的エネルギーは、定常状態ではとびとびの値をとるが、この値をエネルギー準位、そのなかで最底の準位にあるときを基底状態、そして光や熱を働かせて基底状態から高い準位に移すことを励起すると呼んでいる。励起状態からほかの低い準位に戻ると、準位間のエネルギー差に応じた周波数の電磁波が放射される。いま、物質の量子力学的エネルギーをなんらかの方法で高い準位に励起させておき、それに準位間のエネルギー差に応ずる周波数の電磁波をぶつけると、低い準位に移って同じ周波数の電磁波が誘導放出される。すなわち、光の増幅が行われたことになる。これがlaserの内容である。

 レーザー光は、位相がほとんど完全にそろったコヒーレン光で光干渉が容易である、単色性が優れ周波数幅が鋭いパルスが得られる、ビームの広がりが小さく指向性が非常に良い、輝度温度が著しく高くなるなどの優れた性質をもつ。人工衛星や月の測距には、それらに反射器をセットして、RbレーザーやYAG(YtAIGa)レーザーのパルスを当てる。レーザー測距のLaser Rangingを縮めたLRに、SatelliteのS、LunarのLをつけてSLRやLLRの略語が生まれた。地上の光波測距儀では、月や人工衛星と違って距離が小さいから出力は小さくても良く、パルスではないHe−Neレーザーの連続光が使われる。

LinkIcon(社)日本測量協会発刊 月刊「測量」より抜粋