トンネルの貫通誤差

 世紀の大事業の一つにふさわしい青函トンネルが1985年に貫通、88年3月13日からは鉄道が開業した。海底部23.3kmの延長は、当分の間世界記録として保持されるであろう。(注:現在は37.5kmのユーロトンネルができ2位)ここでは先進導坑、作業坑、本坑の3本のトンネルが掘削されたが、最初の貫通は先進導坑で1983年1月27日であった。このときの貫通誤差はX座標で37.4cm、Y座標で52.5cmであり、また高さの出合差は19.6cmであった。この貫通誤差は、竜飛岬および吉岡側からそれぞれ約12kmにわたって坑内で進められた多角測量(開放方式)と、直接水準測量による最終結合点の成果の比較であるから、きわめて理解しやすい。

 一般の土木工学では、両側からの掘削が出合ったとき、設けてきた中心線の延長の水平、高低のくい違いと延長距離の差とで貫通誤差を表すことが多い。しかし、中心線は最終的に一致させるべき性質のものであるから、どの時点における中心線かを定義しないと、明確な貫通誤差は得られない。実際には貫通に近づいたころ調査導坑を先進させて、修正掘削をすることが多いらしい。1934年完成の丹那トンネルでは、その部分の実測図が残されていて、貫通誤差の性質が明らかにわかる。        

 海底トンネルでは、陸地のように中間縦坑が設けられない。誤差を数10cm以下に押さえた青函トンネルの坑外および坑内測量の優秀さに改めて敬意を表するとともに、一般のトンネルについても、貫通誤差というものは青函トンネル方式で求められることを希望したい。


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LinkIcon(社)日本測量協会発刊 月刊「測量」より抜粋