子午線
子午線という言葉から普通連想されるのは、地図上の経線か明石市を通る日本の基準子午線であろう。岩波の広辞苑を引くと、1.或る地点の天頂と天の北極と南極とを通過する天球上の大円、2.地球上の一地点と地理の南北極とを含む平面が地球表面と交わった大円、となっている。いま、この定義の前者を天球子午線、後者を地球子午線と呼んで区別してみよう。
地球子午線は地図の経線であるから、同一経線上にあるすべての地点の経度は等しく、方位0°の方向は共通である。これは当然の事実と思われるかもしれないが、実は多少の解説が必要である。この場合の経度は、国が三角測量で定めた測地経度(地理学的経度といってもよい)である。
ある地点の天頂とは、そこに立っている人間の真上、つまり鉛直線の上方と天球との交点である。天の北極と南極とは地球の自転軸が天球を貫く点であって、天球上の定点である。ところが、ある地点とか人間とか鉛直線とかという言葉は特定の条件にしばられている。結論を早めると、ある地点の鉛直線は、構造の違いによる地下物質の分布むらが影響して、測量の準拠楕円体がもつであろう本来の垂線方向とは多少傾いている。これを鉛直線偏差と呼ぶが、厳密なことをいうと、この偏差は地点ごとに違う。したがって、同一の地球子午線上にある各地点の天球子午線は地点ごとに異なり1本ではない。すなわち定義1は特定地点の天文経度を、定義2は測地経度を念頭におかなければならない。
(社)日本測量協会発刊 月刊「測量」より抜粋