GPS
最近はINFとかOAとかの外国語の頭文字をつづった略語体や、それを仮名読みしたレーザーなどが日常語として登場している。名は体を表すというが、こういう略語体からは内容や意味が推定できない。これでは、まず物があって、その名前を暗記する幼児体験に戻らざるを得ないが、原語がわかれば、やや理解の過程を助けるかもしれない。
今をときめくGPSはGlobal Positioning Systemの略語で、Globalはglobe(球)の形容詞で、この場合は“地球規模の”という意味となる。Positioningは、星や太陽を観測して地点の位置を決めること、つまり測位の意味である。Systemはシステムでよかろう。かくて「地球規模測位システム」がGPSの正体である。
3次元で地点の位置を表わすとx, y, zで、これを決めるには、空間位置既知の衛星が3個あって、そこから地点までの距離がわかればよい。衛星の電波信号発射時刻と観測点での受信時刻との差から、この距離は求まる。受信地の時計の正確さの問題で、衛星は4個以上必要となるが、ともかく測位の精度は数十m、船や航空機にはこれで充分で、干渉方式にすれば高精度の測地にも使える。
理屈を知らなくてもテレビが楽しめるように、一般の人は、将来マイカーの位置確認にGPSが応用されたとき、車体に書かれた今の4WDの代わりにGPSを誇示すればよいであろう。そのときにも略語体は便利である。
(社)日本測量協会発刊 月刊「測量」より抜粋