慣性測距儀

 一般に長さを測るときには物差を使う。測量では距離を巻尺で測る。物差も巻尺も、ある一定の規格で作られている。その規格の源は、光が真空中を(1/299792458)秒の間に進む距離を1mとする国際規約(1983)であるが、そのことを頭におけば、光波測距儀や、VLBIの場合の物差の規格は、レーザー光や宇宙電波の周波数ないし波長ということになる。

 さて物体が運動していて、その速度が終始一定ならば、速度に所要時間を乗ずれば距離がわかる。しかし、常に定速ということはなかなか難しい。それならいっそのこと加速度でというアイデアが生ずる。加速度は時間による距離の2次微分であるから、加速度を測って、時間を乗じて速度を得、さらに時間を乗ずれば距離になる。つまり、うまい、うまい加速度計をつくればよい。

 そこで、ニュートンの運動第2法則に基づいて、ある質量の振子に加速度を力として感じさせ、実際には振子が振れないような電磁抵抗を起こす電流の強弱に変換する。この種のサーボ型加速度計が、最近市販されはじめた。

 測量は高低のある地上で行われるから、3次元の3軸方向それぞれに加速度計を設ける。この軸方向を空間に対して固定させるために、ジャイロスコープと2重のジンバル支持枠を組み合わせた台座に加速度計をセットするから、かなり大げさなものになる。これを車に乗せて測り回る。国土地理院のテストでは、2〜3km間隔の約10点の測点を1時間ほどで測り、平面座標、高さとも大約30cmの精度が得られたという。

LinkIcon(社)日本測量協会発刊 月刊「測量」より抜粋