フィヨルドの潮汐
今年の6月にノルウェーのフィヨルドを旅した。フィヨルドはノルウェーだけでなく、スコットランド、グリーンランド、北米、ニュージーランドなどにも発達している細長くて水深が深い氷食の入江である。これがつくられるためには、大規模な氷河があること、海まで迫った高峻な山があること、さらに深い渓谷があることの3条件が必要であるといわれる。
第四紀最後のヴュルム氷期には、スカンジナビア半島は厚さ2,000mの氷河に覆われていた。標高1,000m前後の峠を越えるノルウェー国道沿いの山頂は、いずれもなだらかな氷食地形で、ほぼ2万年前の氷河をほうふつとさせる。渓谷の条件は、深いU字谷をつくるには重力による重圧が必要になるからで、船から見ると、1,500mの山稜からの絶壁がそのまま岸に没して、そこからまた1,000mの深さのU字谷につながるという。
フィヨルドは外海に面する胴体から上流にさかのぼると、多数の腕(アーム)に分かれ、それがさらに指(フィンガー)に分かれる。私はゲイランゲルフィヨルドを見てから、ノルウェー最長を誇るソグネフィヨルドの末端指のナロイフィヨルドを船で楽しんだが、海岸から150kmも入り込んだ湾岸で、高さ60cm見当の白い帯を見つけた。案内役の高校の先生に尋ねると、いまは干潮だとのこと。河の感潮域だのボアの話は知っていたが、思いがけない奥地のフィヨルドの潮汐に驚嘆した。
また、デンマークではhavn(港)がハウンで、首都はコペンハウンであったから、ティコ・ブラーエのウラニボルク天文台があったHven島は、フヴェンではなくてフエンであろうとの収穫もあった。
(私が旅行したときのフィヨルドの写真はこちら)
(社)日本測量協会発刊 月刊「測量」より抜粋